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最先端の日本酒と料理のペアリング
※20歳未満の者への酒類の販売はいたしておりません。
昨今、肉や魚の「熟成ブーム」に相まって、日本酒も熟成酒が注目されています。長期的にじっくり熟成させた日本酒を「古酒」と呼びますが、ひとくちに古酒といっても熟成期間によって大きく味わいが異なります。今回は、日本酒の熟成について解説した上で、おすすめの寝かせ方について紹介していきます。
日本酒を寝かせることを熟成といいますが、熟成とはつまり、液体中の成分が化学反応によって変化する過程を意味します。
日本酒には多様なアミノ酸、酸、糖が含まれていますが、複雑な成分どうしが長期間寝かせている間に化学反応を起こすことにより、日本酒が独特の色、香り、味わいを形成していくのです。
吟醸酒や大吟醸酒はこれらの成分が少ないため、変化も少ないのですが、純米酒や本醸造酒はこうした成分を多く含むため、変化が大きく見られます。
日本酒の熟成はお酒を搾った瞬間からはじまりますが、そのプロセスは人間の成長に例えるとわかりやすいです。搾りたてのお酒が人間でいう生まれたての時期だとすれば、新酒の間は人間の赤ちゃんと同じように、なんとなく似通った色、香り、味わいを持っているものの、育って(熟成して)いくにつれてそれぞれの個性が芽生えて、個体差が際立ってくるのです。
日本酒は、寝かせる期間や温度によって大きく変化します。一般的には、寝かせる期間が長いほど個性が顕著にあらわれ始めます。
【搾りたて〜数ヶ月】
まず、搾りたてから数ヶ月の間は、新酒特有のフレッシュなガス感、吟醸香(フルーティな香り)、強めな酸をもっている場合がほとんどで、色の違いはほとんどなく、香りや味わいや違いもどんな酵母で醸造されたか、精米歩合はどうかなど、人間でいうと「出自」による違いに拠るところが多くあります。
【数ヶ月〜約1年】
その後数ヶ月〜約1年経つと、香りや味わいの個性があらわれはじめます。酵母由来の吟醸香は減少していき、「旨味」を司るコハク酸はくどさを抑えてすっきりした旨味に変わり、「酸味」を司るリンゴ酸も鋭さを抑えてやわらかさを増していきます。同時に苦味も増えていきますが、これは味に奥行きをもたせる役割を担います。
また、この頃からお酒の色の変化を起こす「メイラード反応」と呼ばれる現象がはじまります。メイラード反応とはアミノ酸と糖が化合する現象ですが、色味の変化と香ばしさを生み出します。身近な例を出すと、玉ねぎを炒めているときに飴色から次第に褐色に変わっていったり、肉や魚を焼いたときに焦げるなどの現象はメイラード反応によるものです。
【2~5年】
その後も時間経過に伴って熟成が進むと、液体中の成分量はそれぞれ変化し、個体差がますます際立ってきます。
熟成が進むと吟醸香のもとになる「有機酸エステル」という物質は徐々に減少していき、代わりに穀物っぽい少し重みがある香りの成分が生まれてきます。また、メイラード反応に伴って生成される「ソトロン」という物質の焦げた香りが、有機酸エステルの香りと混ざることにより、複雑な香りがつくられていきます。
また、メイラード反応は「積算温度」という経過時間と温度の掛け合わせによって進みの速さが変わってきます。例えば長い時間、高い温度帯の環境で寝かせると変化はより顕著になります。
【5年〜】
熟成期間が5年以上経つと、熟成温度によってタイプが大きく分かれてきます。また、メイラード反応が進んで色はより濃く、香ばしさも増し、味わいもより奥ゆかしさを帯びてきます。
タイプ | 特徴 |
---|---|
濃熟タイプ | 熟成温度は常温。熟成が進むにつれて、色、香り、味わいが劇的に変化し、複雑で個性豊かな熟成古酒になります。一般的には本醸造酒、純米酒が該当します。 |
淡熟タイプ | 熟成温度は低温のため、濃熟タイプと比べてメイラード反応が起こりにくい。そのため色の変化はほぼないが、味わいがじんわりとやわらかく、奥ゆかしい味わいになります。一般的には、アミノ酸と糖の含有量が少ない吟醸酒が該当します。その年の造りの傾向を十分に把握した寒い時期に、「しぼりたて」の締めくくりとして無濾過で瓶詰めしたお酒。生まれたてのお酒本来の味わいを楽しめます。 |
また、熟成温度を低温と常温とで併用した「中間タイプ」と呼ばれるものもあります。低温から常温へ、またはその逆にシフトして保存することによって、濃熟タイプと淡熟タイプの中間の味わいを実現したのが中間タイプです。
このように、日本酒は寝かせる期間や温度帯によって大きく変わってきますが、基本的な傾向としては、寝かせるほどアルコールの刺激や酵母由来の香り、揮発成分などの荒々しさが消えて、個性豊かな味わいが際立ってくることが特徴です。
日本酒の熟成は期間と温度によって進み方が変わってくることがわかりました。では、自宅で日本酒を熟成させたいときには、どのようなことに気をつけたら良いのでしょうか。最後に、日本酒がおいしく熟成する寝かせ方について紹介します。
自宅で日本酒を熟成したい場合、注意が必要なのは「光」と「温度」です。直射日光を避けて、高温にならない環境で保存するのがなによりも重要になります。紫外線があたったり、太陽の強い光がお酒の一部にあたったりすると、熟成どころか劣化が進んでしまいます。一般的には温度が30℃以上になると変化しやすくなるので、温度が上がりすぎない、なるべく低温の環境に置いておきましょう。また開栓後は、なるべく空気に触れないように保管することも大切です。真空状態で密閉できる栓を活用することがおすすめです。
また種類別でみると、本醸造酒、純米酒の場合は「常温」で、直射日光を遮断した環境で保存することを推奨します。一方、吟醸酒は冷蔵庫で1年ほど寝かせましょう。香りやアルコールが落ち着いた後に、15~18℃ほどを維持できる冷暗所に保存しておくのがベストです。
以上、日本酒の熟成と、自宅での寝かせ方について紹介しました。いかがでしたでしょうか。同じ種類の日本酒でも、すぐに飲む用と、気長に寝かせる用とで2本買って比べてみると面白い発見があるかもしれませんね。